2012/05/02

御岳BC[10'回顧録-最終章]#3

またまた、つづき・・・最終章。
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ここから、再び悪夢の40分?が始まる・・・・ 

立ち上がるも、そもそも、その状態が危うい。 
両脇についたストックも、足下のスキーも体重を預けるには心許ない。 

しかし稜線に出ないことには、何も出来ない。とにかく平坦なスペースを目指す。稜線までは距離にして2、30m位か?(もっとかも) 
 水が浮いたような光る氷の上にスキーを置き、1歩づつグリップを確かめ、ストックを二度突きし、「滑るなよ!」と願いつつ体重をかける。
 それでも、斜度と硬さを増した斜面はシールのグリップを拒否するかのようにスキーを僅かに滑らせる。 
「!!」 
その度ごとに、怒りにも似た緊張が走る。 

1歩ごとに、その緊張を強いられる。まだ、先は長い・・・ 

体力的な疲労は思っていたより無いが、精神的にすり切れる。 
おそらく、1度めの登坂時の1/2のスピードもなかったと思う。 
先行したチームはもう何処まで行ったか解らない。
自分の足下のグリップ以外、思考に余裕はない。 

 ストックは左手のみストラップを通した。また滑ったときに右手がすぐに出るように・・・と(今にして思えばその選択では、必ずストックを失う訳で、ましてや、左のストックが確保出来るとは限らない。今にして思えば余り良い選択ではないと思う。) 

 1歩、そして1歩、選択肢のないギャンブルをしながら、少しずつ、ほんの少しずつ、進める。が・・・


歩幅が少なすぎても 
「ツルッ!」 

ある程度歩幅を前に出さないと、踵加重にならずトップに加重が残り最悪、両スキーが滑る。 
登坂中は、恐怖から斜面に上体が近づくと踵の加重が減り滑りやすい。(ようだ!)
要は怖くても後ろに上体を運び「ド後傾」で登るのが望ましい。(ようだ!) 
しかし、滑落した直後の僕にはそんな事が出来るわけもなく。 
無情にも僕の信頼を簡単に裏切るシール!
後ろ加重など出来るわけがない!!で、結果・・・ 

「ツルッ!」 
いちいち、滑る。 
気持ちが折れそうになる。 
  
それでも、ナンとか稜線まで出る。が・・・雪はさほど柔らかくはない!? 
「柔らかいっていったじゃん!!!」 とやり場の無い怒りを口にしながら・・・

そして、稜線に出たとたん強風が襲う・・・・顔が痛い耳がちぎれそうだ。冷たく強い風が襲う。


「ヘルメットがかぶりたい。」 

鐘の場所まで5m位。斜度は若干緩くなり、複数の人が通った後は雪が少し柔らかい。 
鐘周辺では複数の人が下山準備に入っていた。 
なまじ、体力的には余裕があったため休憩もせず先行チームを追う。 
斜面は幾分ましだが、決して気が抜けない。
それでも、斜度が少し緩んだため張りつめた緊張から少し解放された・・・ 

と思っていた瞬間足下がずれる!! 

「?!!」 

右スキーが外れる!! 

・・・これで、完全に折れた。 

張りつめていた気持ちが切れる・・・ 
ビンディングまでも信頼できなくなる。 

自分の中で下山を決める。 

上を見上げると、8,9合目の小屋下で隊長がキックターンを切っているのが見えた。 
不安定だ。彼はスキーアイゼンを付けているため少しは無理が効くだろうが、
あれだけの急斜面でのキックターンはこちらも生きた心地がしない・・・・・ 

その後、急にガスが風に乗り上がってくると、あっという間にホワイトアウト!稜線の先から上は全く見えなくなる! 

僕はフラットを探し下山準備を始める。 
そして、先行しているチームにリタイアを伝え、上部の様子を聞く。 
先行チームは3人が社まであがり、連絡無し。セカンドは小屋待機で下山準備中とのこと、セカンドを待たず下山してください。とのことだったので視界のあるうちに準備を進める。 

強風の中の作業は緊張を強いられる。登坂用の帽子やサングラスをはずし 
ヘルメット、ゴーグルに・・・防寒着を着込み、シールを外し、ザックに 
つめ・・・強風の中では、一つ一つの作業すら神経がすり切れる。 

 案の定、準備中もなにやら沢の方にモノが落ちてゆくのを何回か見た。 
(人もね・・・) 

ようやく、スキーモード(滑走モード)にしたビンディングをつけ、立ち上がる。 

スキーモードになってしまえば、滑落のリスクは半分以下だ!(気分的には?) 
しかし、十分にすり切れた僕の神経は滑りを楽しむ余裕など微塵もない。 

その上、凍てついた斜面は滑るにしてもかなり、リスキーな斜面だった。 
雨に叩かれた斜面が凍りゴルフボールのディンプルのように細かく波立ち硬い・・・
※いわゆるスプーンカットってヤツ。


ターンするもスキーが横を向くと 
「ガガッガガッガガガガッガガガガガガ・・・・・・」 
今シーズン?生まれてこの方、最強のアイスバーン? 
「おいおい、どーすんだこれ!」 
スキーを踏ん張ると 
「ガガッガガッガガガガッガガガガガガ・・・・・・」 
踏ん張っちゃ行けないと解っていても恐怖からスキーを山回りでしか踏めない! 
「谷回り?出来るか!そんなの!!」 
「ガガッガガッガガガガッガガガガガガ・・・・・・」 

ようやく樹林帯に逃げ込むもプチ迷子??? 

迷ったあげくになんとかゲレンデに出ると、そこは日常的なスキー場の風景。
「ああ、ゲレンデってなんて守られた空間なんだ。」 

数メートルの差でのオンとオフのギャップに改めて驚くも 
いつものその風景に気が抜ける。
今だに冬期ここまで行けた事が無い・・・
ゲレンデトップのレストランに逃げ込み、チームを待つ。 
疲労?の為うたた寝をしつつ、しばらくしてようやくチームが降りてきた。 

取りあえず全員集合し、記念撮影!僕はまた今年も達成感のないアタックとなってしまった。
来年はロープ倒産のためゴンドラは動かない。 
リベンジはあるのか・・・・
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ほんの数年前のお話・・・いまだトラウマ。
リベンジの様子はこちら・・・

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